電力会社国営にすべし ―電力会社はすでに違法状態である

原子力発電事業は実はもう破綻していて、ケンシロウ風に言えば「お前はもう死んでいる」ということになる。東京電力は正式名称東京電力株式会社という。つまり有限責任法人、営利企業といふことだ。原子力基本法には、民主的な運営という文言があるが、大株主が合法的に支配できる株式会社が民主的な運営なのかという疑問が残る。また、今回の事故でもそうだが、政府が損害を補填しなければならない営利法人とはなんなのか。そこで先に紹介した原子力損害の賠償に関する法律から再度検証してみよう。

第3条に、
第三条  原子炉の運転等の際、当該原子炉の運転等により原子力損害を与えたときは、当該原子炉の運転等に係る原子力事業者がその損害を賠償する責めに任ずる。ただし、その損害が異常に巨大な天災地変又は社会的動乱によつて生じたものであるときは、この限りでない。
2  前項の場合において、その損害が原子力事業者間の核燃料物質等の運搬により生じたものであるときは、当該原子力事業者間に特約がない限り、当該核燃料物質等の発送人である原子力事業者がその損害を賠償する責めに任ずる。
この規定は株式会社が事業によって事故が起きた場合には原子力事業者がその損害を賠償する責任があるとしている。しかし後段で異常に巨大な天変地変または社会的動乱の場合には免責されるとしている。さらに10条では、
第十条  原子力損害賠償補償契約(以下「補償契約」という。)は、原子力事業者の原子力損害の賠償の責任が発生した場合において、責任保険契約その他の原子力損 害を賠償するための措置によつてはうめることができない原子力損害を原子力事業者が賠償することにより生ずる損失を政府が補償することを約し、原子力事業 者が補償料を納付することを約する契約とする。
2  補償契約に関する事項は、別に法律で定める。
損害額が巨大になり電力事業者では補償できない場合は政府が補償することを約束している。2項の法律とは原子力損害賠償補償契約に関する法律で、第2条に、
第二条  政府は、原子力事業者を相手方として、原子力事業者の原子力損害の賠償の責任が発生した場合において、責任保険契約その他の原子力損害を賠償するための 措置によつてはうめることができない原子力損害を原子力事業者が賠償することにより生ずる損失を政府が補償することを約し、原子力事業者が補償料を納付す ることを約する契約を締結することができる。
政府が補償した補償金は政府に返却する契約をするのだが、返済の義務についての規定がない。
第十三条  政府は、次の各号に掲げる原子力損害に係る補償損失について補償金を支払つたときは、原子力事業者から、政令で定めるところにより、その返還をさせるものとする。
一  補償契約の相手方である原子力事業者が第九条の規定による通知を怠り、又は虚偽の通知をした場合において、その通知を怠り、又は虚偽の通知をした事実に基づく原子力損害
二  政府が第十五条の規定により補償契約を解除した場合において、原子力事業者が、その解除の通知を受けた日から解除の効力が生ずる日の前日までの間における原子炉の運転等により与えた原子力損害
「返還させる」とといことはおそらく「返還の義務がある」という意味ではなく、させることができるくらいの意味だろう。もう少し法令を調べると、国家及び公共団体職員が何らかの過失で損害を他人に与えた場合には国家賠償法によって国または公共団体は賠償する責任がある。
第一条  国又は公共団体の公権力の行使に当る公務員が、その職務を行うについて、故意又は過失によつて違法に他人に損害を加えたときは、国又は公共団体が、これを賠償する責に任ずる。
○2  前項の場合において、公務員に故意又は重大な過失があつたときは、国又は公共団体は、その公務員に対して求償権を有する。
第二条  道路、河川その他の公の営造物の設置又は管理に瑕疵があつたために他人に損害を生じたときは、国又は公共団体は、これを賠償する責に任ずる。
○2  前項の場合において、他に損害の原因について責に任ずべき者があるときは、国又は公共団体は、これに対して求償権を有する。
第三条  前二条の規定によつて国又は公共団体が損害を賠償する責に任ずる場合において、公務員の選任若しくは監督又は公の営造物の設置若しくは管理に当る者と公 務員の俸給、給与その他の費用又は公の営造物の設置若しくは管理の費用を負担する者とが異なるときは、費用を負担する者もまた、その損害を賠償する責に任 ずる。
○2  前項の場合において、損害を賠償した者は、内部関係でその損害を賠償する責任ある者に対して求償権を有する。
しかし公務員個人に故意もしくは重大な過失があった場合は国または公共団体はその個人にその支払を求めることができる。さらに国または公共団体が管理している土地や建造物の管理に瑕疵があった場合にも国または公共団体には賠償責任がある。しかし東京電力は株式会社という民間企業であり、その役員も従業員も国または公共団体の職員ではない。

憲法に規定する職業選択の自由は営業に自由を含有するというのが今日の有力な見解だ。それは民法の規定する契約の自由にもつながる基本権だが、民間企業と営利活動には基本的に国家は介入しないということだ。放漫経営による倒産やもっといえば自然災害による倒産などにも国家は基本的に無介入が建前だ。ところが原子力発電を含む発電事業には原子力基本法原子力損害の賠償に関する法律原子力損害賠償補償契約に関する法律 と国家の関与を肯定させるための法令が用意されている。何かあれば税金が使われるのであれば、やはり国家機関として事業し公務員としてその事業に従事する、要するに国営が望ましいのではないだろうか。

最後に福島第一原子力発電所の事故当時それに対処した東電側の責任者たちの所在を書いておく。

勝俣恒久会長
日本原子力発電の社外取締役に再任(現在家族と共に海外在住)
清水正孝社長
関連会社・富士石油の社外取締役に天下り (現在家族と共に海外在住)
武井優副社長
関連会社・アラビア石油の社外監査役に天下り(現在家族と共に海外在住)
宮本史昭常務
関連会社・日本フィールドエンジニアリングの社長に天下り(現在家族と共に海外在住)
木村滋取締役
関連会社・電気事業連合会の副会長に再任(現在家族と共に海外在住)
藤原万喜夫監査役
関連会社・関電工の社外監査役に再任(現在家族と共に海外在住)

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