TPPとはなにか ―GATT・WTO体制から考えるTPP

TPPというのはWTOが認めるGATT体制の例外で、自由貿易協定や関税同盟などの地域貿易協定のことだ。そのことについての議論が国会の場でもあまりされていないように思う。おがた林太郎元衆議院議員のブログそもそもFTAとはというエントリーがあり、自由貿易協定の根拠はガット24条だということを知らない議員が多いと指摘している。

経済産業省の説明では自由貿易協定(FTA: Free Trade Agreement)と関税同盟(Customs Union)を総称して地域貿易協定としている(RTA: Regional Trade Agreement)が、これらはGATT・WTO体制の例外として認められている協定で、それを規定しているのがガット24条という事になる。経済産業省のHPに関税及び貿易に関する一般協定、GATTの翻訳が掲載されている。
この協定の適用上、
(a) 関税同盟とは、次のことのために単一の関税地域をもつて二以上の関税地域に替えるものをいう。
(i) 関税その他の制限的通商規則(第十一条、第十二条、第十三条、第十四条、第十五条及び第二十 条の規定に基いて認められるもので必要とされるものを除く。)を同盟の構成地域間の実質上のすべての貿易について、又は少くともそれらの地域の原産の産品 の実質上のすべての貿易について、廃止すること。
(ii) 9の規定に従うことを条件として、同盟の各構成国が、実質的に同一の関税その他の通商規則をその同盟に含まれない地域の貿易に適用すること。
(b) 自由貿易地域とは、関税その他の制限的通商規則(第十一条、第十二条、第十三条、第十四条、第十五条 及び第二十条の規定に基いて認められるもので必要とされるものを除く。)がその構成地域の原産の産品の構成地域間における実質上のすべての貿易について廃 止されている二以上の関税地域の集団をいう。
TPPも含む地域貿易協定の根拠は24条にある。つまりTPPにも最恵国待遇が適用されるということだ。一応経産省のHPから最恵国待遇のPDFにリンクを張る。

WTOはその前進であるGATT(General Agreement on Tariffs and Trade) 関税及び貿易に関する一般協定が機関に昇格したものだが、実は国際通貨基金、世界銀行と並びブレトン・ウッズ体制の枠組みとして発足するはずだった国際貿易機関(International Trade Organization)が遅れて実現した機関だ。これらはリベラリズムを背景に組織された制度であり、そもそも第一次世界大戦の反省として現れたものであるが、結局世界はブロック化し結果的に第二次世界大戦を引き起こすことになる。ITOは推進するアメリカ連邦政府が議会の反対に会い設立で出来ず、国際貿易憲章(ハヴァナ憲章)も承認する国が少なく頓挫、暫定的にGATTという形でアメリカ政府が構築した自由貿易体制だ。

TPP贊否議論の初期、TPPをアメリカのブロック経済圏として捉える議論があった。私もそう捉えていたのだが、それはやや的外れではあった。だが本質的には当たっているといえる。TPPがガット24条を根拠に話し合われる限りはブロック経済圏ではない。最恵国待遇や内国民待遇は経済をグロック化させないための制度だからだ。しかしアメリカ政府(リベラル勢力。民主党系といえる)が推進するという意味ではアメリカ1極に向けたブロック化の営みであることは間違いないだろう。

WTO体制の一員である我国はTPPに参加しなくとも何らかの形でアジア諸国と地域貿易協定を締結した場合には、構成国間の「実質上全ての」貿易について関税等を廃止すること、及び FTAメンバー以外の国に対する関税等を引き上げないことを規定することになる。実質上すべての貿易というのがどれくらいを云うのかは議論があるがおほよそ90%というのが通説でそれを「妥当な期間」で撤廃することになる。妥当な期間も議論があり現在は10年が目安になっているようだ。つまリこの規定より高度な規定を締結することは出来るが、90%以下、10年以上という規定は出来ないことになる。どうやらTPPの論点は「非関税障壁」の問題に集約されることになる。

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