日本国憲法の研究 ―合衆国憲法との比較 第6章

合衆国憲法の6章は最高法規であることを規定する内容、早速確認しよう。

第6章[最高法規]
[第1 項] この憲法成立前に契約されたすべての債務および締結されたすべての約定は、この憲法の下 においても、連合規約の下におけると同様に、合衆国に対して有効である。

[第2 項] この憲法、およびこれに準拠して制定される合衆国の法律、ならびに合衆国の権限にもとづ いて締結された、または将来締結されるすべての条約は、国の最高法規である。すべての州の裁判官は、 州の憲法または法律に反対の定めがある場合でも、これらのものに拘束される。

[第3 項] この憲法に定める上院議員および下院議員、州の立法部の議員、ならびに合衆国および各州 のすべての行政官および司法官は、宣誓または宣誓に代る確約により、この憲法を擁護する義務を負う。 但し、合衆国のいかなる官職または信任による職務に就く資格条件として、宗教上の審査を課してはなら ない。

最高法規という文言が憲法についての勘違いを起こす原因だ。法律というのは命令書であるからこの命令は何より優先されるということだ。つまり州政府が州民に対し合衆国憲法で保障されている権利や付与されている権限を超えて法律を制定できないという意味だ。

日本国憲法は司法についての規定になる。

第六章 司法
第七十六条  すべて司法権は、最高裁判所及び法律の定めるところにより設置する下級裁判所に属する。

2項  特別裁判所は、これを設置することができない。行政機関は、終審として裁判を行ふことができない。

3項  すべて裁判官は、その良心に従ひ独立してその職権を行ひ、この憲法及び法律にのみ拘束される。

第七十七条  最高裁判所は、訴訟に関する手続、弁護士、裁判所の内部規律及び司法事務処理に関する事項について、規則を定める権限を有する。

2項  検察官は、最高裁判所の定める規則に従はなければならない。

3項  最高裁判所は、下級裁判所に関する規則を定める権限を、下級裁判所に委任することができる。

第七十八条  裁判官は、裁判により、心身の故障のために職務を執ることができないと決定された場合を除いては、公の弾劾によらなければ罷免されない。裁判官の懲戒処分は、行政機関がこれを行ふことはできない。

第七十九条  最高裁判所は、その長たる裁判官及び法律の定める員数のその他の裁判官でこれを構成し、その長たる裁判官以外の裁判官は、内閣でこれを任命する。

2項  最高裁判所の裁判官の任命は、その任命後初めて行はれる衆議院議員総選挙の際国民の審査に付し、その後十年を経過した後初めて行はれる衆議院議員総選挙の際更に審査に付し、その後も同様とする。

3項  前項の場合において、投票者の多数が裁判官の罷免を可とするときは、その裁判官は、罷免される。

4項  審査に関する事項は、法律でこれを定める。

5項  最高裁判所の裁判官は、法律の定める年齢に達した時に退官する。

6項  最高裁判所の裁判官は、すべて定期に相当額の報酬を受ける。この報酬は、在任中、これを減額することができない。

第八十条  下級裁判所の裁判官は、最高裁判所の指名した者の名簿によつて、内閣でこれを任命する。その裁判官は、任期を十年とし、再任されることができる。但し、法律の定める年齢に達した時には退官する。

2項  下級裁判所の裁判官は、すべて定期に相当額の報酬を受ける。この報酬は、在任中、これを減額することができない。

第八十一条  最高裁判所は、一切の法律、命令、規則又は処分が憲法に適合するかしないかを決定する権限を有する終審裁判所である。

第八十二条  裁判の対審及び判決は、公開法廷でこれを行ふ。

2項  裁判所が、裁判官の全員一致で、公の秩序又は善良の風俗を害する虞があると決した場合には、対審は、公開しないでこれを行ふことができる。但し、政治犯罪、出版に関する犯罪又はこの憲法第三章で保障する国民の権利が問題となつてゐる事件の対審は、常にこれを公開しなければならない。

合衆国憲法は各州の司法部の上に設置される連邦裁判所に対する規定なのでシンプルだ。言葉のシンプルさというのは言葉に対する懐疑を特徴とするエクイティとコモンローという、米英の司法制度の特徴でもある。

なかなか理解できないのがコモンローと制定法には決定的な違いがあるということ。じつはそれが大日本帝国憲法には取り入れられて、日本国憲法で失われてしまった立憲の精神なのだ。

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