違憲判決に対応しない議会 ―議会は憲法によって組織されていることを国会議員はご存知だろうか

”「一票の格差」が最大2・43倍だった昨年の衆院選は違憲だとして、弁護士グループが選挙無効を求めた訴訟の上告審判決で、最高裁大法廷(裁判長・竹崎博允長官)は20日、区割りを「違憲状態」と判断した。選挙無効の請求は退けた。

選挙は、最高裁が平成23年に「違憲状態」と指摘した区割りのまま実施されており、判決から選挙までの約1年9カ月間の国会の取り組みをどう評価するかが最大の焦点だった。

昨年の衆院選をめぐっては、2つの弁護士グループが全国14の高裁・支部に計16件の訴訟を提起。高裁段階では、同種訴訟で戦後初の「違憲・無効」判決が2件出されたほか、「違憲・有効」判決が12件、「違憲状態」判決が2件だった。

最高裁は23年、最大格差2・30倍だった21年選挙を「違憲状態」と判断し、都道府県に1議席を割り当て、残りを人口に応じて配分する「1人別枠方式」が格差の主因と指摘した。

1人別枠方式は条文から削除され、小選挙区定数を「0増5減」する緊急是正法が成立したが、昨年の選挙には区割りが間に合わず、当日有権者数に基づく最大格差は2・43倍まで拡大した。

一方、全ての高裁判決が言い渡された後の今年3月には、区画審が区割り改定案を勧告。6月には区割り改定法が成立し、最大格差が2倍未満まで縮小した。

山本庸幸裁判官は、「0増5減」法案の審議当時、内閣法制局長官だったことを理由に審理から外れた。自民、民法改正案を了承 婚外子規定削除へ
”自民党法務部会(大塚拓部会長)は5日、結婚していない男女間に生まれた非嫡出子(婚外子)の遺産相続分を嫡出子と同等とする民法改正案を了承し た。党内の保守派議員から慎重論が出たが、最高裁が9月の決定で非嫡出子の遺産相続分を嫡出子の半分とする民法条文を「違憲」と判断したことを踏まえた。

政府は近く民法改正案を提出するが、公明党がすでに改正案を了承しているほか、野党も同様の法改正を求めており、今国会での成立が確実になった。

部会では政府が提示した改正案について、「最高裁の判断をそのまま受け入れるのか」「家族制度を守る法整備と合わせて来年の通常国会で改正すべきだ」など の反発が相次いだ。このため、大塚氏が自民党内に特命委員会を設置し、1年をめどに家族制度を守るための諸施策をとりまとめることを提案し、ようやく了承 された。具体的には、配偶者の相続割合拡大などを法務省とともに検討する。

ただ、出生届に嫡出子か否かを記載する規定を削除する戸籍法改正については、「最高裁判決はそこまで求めていない」と異論が相次ぎ、了承は見送られた。これに先立ち、民主党とみんなの党、社民党は5日、民法の婚外子規定を削除する同様の民法改正案を参院に共同提出した。”

一票の格差問題は1972年の衆院選が違憲状態と判決されてから、かれこれ40年以上、近年では2009年の衆議院選、2010年の参院選、2013年の衆院選と連続で違憲状態という判断が下されている。

後段の非嫡出子の規定削除とは、民法900条の第4項の、

”子、直系尊属又は兄弟姉妹が数人あるときは、各自の相続分は、相等しいものとする。ただし、嫡出でない子の相続分は、嫡出である子の相続分の二分の一とし、父母の一方のみを同じくする兄弟姉妹の相続分は、父母の双方を同じくする兄弟姉妹の相続分の二分の一とする。”

規定を削除するということだ。法の平等を原則とする法規範上、ある意味当然なのとだとは思うが、法律婚や法的な家族制度との関係を考えると、秩序道徳に与える影響は未知数だ。あるいは私法秩序としての家族や風習などへの影響は計り知れない。結婚や式、子供の養育、埋葬や先祖供養、墓地など旧来からの風習そのものの否定にもつながる可能性は否めない。

問題は非嫡出子への相続規定の違憲判決は2013年9月4日に判断がだされた。民法改正の判断はわずか3ヶ月程度の議論でなされることだ。先の違憲判断は1972年に最初の判断が下され、今日までその是正が遅遅としてすすんでいないことだ。近年では2009年の衆院選から4年目の本年6月、やっと0増5減で可決されたが、民法の改正に比べて10倍もの月日を費やしている。

人口の動態に応じて選挙区の区割りを変更するだけの、議論の余地など無いように思われる違憲判断には数年かかり、 古来からの慣習秩序、国の成り立ち、民族の生存にかかわる重要な私法秩序である、婚姻相続制度にはたった3ヶ月で結論を出す議員たちは、自らが何によってその地位を得ているか、何に拘束されているかを再度考え直す必要があると感じる。

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